リアルスケール社会シミュレーションのための個人属性の合成

原田拓弥
経営システム誌, Vol.30, No.1, pp.68-72, 2020-07

Abstract

リアルスケール社会シミュレーション(RSSS)では、対象地域と同規模の人口を持つ人工社会を用いて、年齢・性別・職業などの個人属性に基づく意思決定をできるだけ現実に近い粒度で再現することが重要になる。一方で、戸籍・納税などの詳細データはプライバシーの観点から利活用が難しく、統計調査の個票利用にも承認や匿名化などの負担が残る。そこで本稿は、公開統計表のみを用いて複数属性からなる人工社会(合成人口)を構築する研究動向を整理し、特にサンプル個票に依存しない焼きなまし法(Simulated Annealing: SA)による合成の枠組みと、その発展を概説する。具体的には、家族類型を考慮しつつ、男女別人口分布、親子年齢差、夫婦年齢差など複数の統計表と人工統計表の差を最小化して世帯・個人を合成する手法を基盤に、大規模化に向けた初期解生成や探索手順の改良、町丁・大字への配置や建物(基盤地図情報)への割当て、就業形態・産業分類・企業規模・所得といった追加属性の付与へと拡張する。さらに、合成データの公開にあたっての誤解やプライバシー懸念を避けるため、現実の世帯・個人情報を含まないこと、未使用統計との整合性は保証しないこと、更新の可能性、複数データによる分析の要請、現実の世帯・個人に結びつく形での結果公開の禁止など、利用ルールを明確化し、RSSSへの参入障壁を下げるデータ基盤としての位置づけを示す。

BibTeX

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  title = {リアルスケール社会シミュレーションのための個人属性の合成},
  author = {原田拓弥},
  journal = {経営システム誌},
  volume = {30},
  number = {1},
  pages = {68-72},
  year = {2020},
  month = {07},
  publisher = {日本経営工学会},
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