原田の共同研究「老後生活に関するダイナミックマイクロシミュレーション」が日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)に採択されました
Published in 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B), 2020
本研究は、超高齢社会を迎えるわが国において、ライフスタイルが多様化した人々が高齢期の生活を維持していくことができるかどうか、経済政策の面から分析・評価するものである。具体的には、将来の高齢者について、モデル世帯の年金額だけでなく、年金額の分布や家族構成を考慮した所得の分布を示すことによって、年金制度などの社会保障制度や税制の在り方を分析・評価するものである。そのため、ダイナミック・マイクロシミュレーションモデルを構築する。本研究では、①モデルを構築して「分布」の政策シミュレーションを実施し、②このモデルを多くの研究者が広く活用できるよう、国勢調査等の集計データをもとにした合成人口データの作成・公開をすることを目的としている。
本年度は、その1年目として、従前のモデルの機能の強化を図るとともに、最新のデータに基づいた遷移確率(個々人の行動を確率で表したもの)の推定や初期値人口の作成を行って、ベースライン・シミュレーションを実施することを予定しており、政府の令和元年財政検証の結果をモデルに織り込んだ。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大は、人々の雇用や所得、結婚や出産に大きな影響を与えているため、当初の予定に加えて、この影響の分析・評価やモデルの再修正の必要が生じた。そのため、心理学分野の専門家を新たに研究分担者に加えて、個々人の就労への影響を多角的に分析・評価することとした。
新型コロナウイルスの感染拡大の終息はみえておらず、今後どのような影響があり得るかについては、次年度の状況の分析・評価が不可欠であり、また、初期値データのアップデートも避けられない。そのため、次年度において、賃金・雇用への影響を正確に把握するために、ねんきんネット(行政データ)を利用した調査を実施するとともに、新たな分析結果を踏まえて、ベースライン・シミュレーションを再度実施することとしている。