研究テーマ
研究テーマについては以下の動画が分かりやすくまとまっています. 研究テーマに関する詳細は本ページ後半を参照してください.
概要
さまざまな情報の活用が我々の日常生活を豊かにしています.その中でも,社会問題の解決のために,情報を活用した制度設計がされ始めています.具体的には,コンピュータ上に作り出した仮想空間(サイバー空間)と現実空間(フィジカル空間)を高度に融合させることで人間中心の社会の実現に向けて研究開発が行われています.これはSciety 5.0と呼ばれ,狩猟社会,農耕社会,工業社会,情報社会に続く新しい社会として提唱されています.
Society 5.0を実現するための具体的な方法の1つがデジタルツインです.デジタルツインとは,現実空間のさまざまな情報を仮想空間上に展開し,これらの情報から分析・予測・シミュレーションにより社会課題解決や意思決定者支援のためのプラットフォームです.たとえば,東京都2030年にデジタルツインを実現するプロジェクトを実施しています.このように,デジタルツインは人間中心の社会を目指すための取り組みですが,実在する個人の情報を仮想空間上に展開することは個人情報保護やプライバシーの観点から困難です.
このような状況から,本研究室では,一人ひとりにとって快適な社会を模索するために,個人情報を保護し,プライバシーに配慮したうえでサイバー空間上に人工社会を構築する研究と,構築した人工社会を用いて社会のさまざまな課題へ向き合う研究に取り組んでいます.この人工社会は内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室が実施するCOVID-19 AI・シミュレーションプロジェクトで活用され,政策決定の一助になっています.
以下にこれらの研究テーマ例を示します.具体的な研究成果については,論文や学会発表,卒修論テーマを参照してください.
プライバシーに配慮した人工社会の構築に関する研究
本テーマは公的統計やオープンデータなど誰もが入手可能なデータを用いて,サイバー空間上に社会を構築する研究です.具体的には,公的統計と同じ統計的特徴をもつ個人の属性を生成する研究を中心に研究開発を進めています.直近では,大規模言語モデルを含む深層学習を活用した研究にも取り組んでいます.
- 離散最適化による個人属性の推定に関する研究
- 複数の公的統計表から世帯と個人を生成する研究
- 生成した世帯が居住する建物を設定する研究
- 生成した個人の所得を推定する研究
- 生成した個人の従業先・通学先を推定する研究
- 生成した個人の日常行動を推定する研究
- 深層学習による個人属性の推定に関する研究
- 大規模言語モデルを用いた個人の属性を生成する研究
- 深層学習による建物用途の推定
また,上記の研究に関する以下の研究開発にも取り組んでいます.
- 生成した個人や世帯へ新たな属性を追加するソフトウェアの開発
- 人工社会を用いたデータ分析・シミュレーションプラットフォームの構築
- 生成した人工社会の精度評価に関する研究
社会のさまざまな課題に向き合う研究
本テーマは前述の人工都市や公開されているデータ,自ら計測したデータなどを駆使し,社会問題の理解を深めたり,施策を検討したりする研究です.たとえば,以下のような研究に取り組んでいます.
- 心停止傷病者の生存率向上を目的とする研究
- 日本全国の市区町村別AEDオープンデータの公開状況の調査
- AED使用率向上のためのリアルスケール社会シミュレーション
- 特定施設における建物の構造を考慮したAEDの配置に関する研究
- モビリティに関する研究
- シェアサイクルデータに基づく各自転車の利用状況推定
- 日本における隠れ待機児童の推定
- 投票率向上のための投票所配置に関する研究
- 小学校の統廃合による児童の通学への影響分析
- 空き家推定による空き家分布の現状把握